補完代替医療にまつわる問題
・真の健康とは、身体の健康のみにとどまらず
心身ともに健やかであること
・身体の良い状態を維持したり、修復したりする
自然治癒力を十分に発揮できるように、
ライフスタイル・生活習慣を重視する
医療が「木を見て森を見ず」であってはなりません。
個々の器官や病気そのものだけを診るのではなく、
獣医療であれば、
飼い主の価値観・経済状況・仕事・ライフスタイルを含め、
動物全体を生活習慣や性格を考慮した上で、
必要な医療を飼い主と一緒に考えながら
実践していくことが重要です
そんな医療が大切であり、かつ求められていることは、
医師や獣医師に限らず多くの方が認識していることと思います。
そんな背景から、既存の西洋医学以外の医療である
漢方や鍼灸、アロマテラピー、ホメオパシーなどの
補完代替医療(CAM)を求める声は大きく、
当院でも診療に取り入れています
ですが、様々な問題があります
① そもそも補完代替医療でなければ
「患者(または動物)中心の医療」ではないかの
ような誤った認識がされている点は問題です。
もちろん、西洋医学であっても「患者中心の医療」は可能です。
現に人の医療では、全人的・総合的に診療を行う目的で
「総合診療科」が存在しています。
それに、動物病院の多くは全科診療ですから、
家庭医・かかりつけ医としての機能を発揮し、
患者中心の総合的な診療を実施しやすい状況にあるはずです。
十分にないものが多い。
科学的に信頼できない、様々な治療法が玉石混交していて
問題があると思われる医療器具やサプリメントも
巷に多く流通しています。
(エビデンスについては改めて後述します。)
③ 西洋医学を実践している医師や獣医師の多くが、
補完代替医療を良く思っていない。
これには理由があります。
まず、投薬中の治療薬との相互作用を有する
健康食品やサプリメントは問題となります。
それから、西洋医学的治療以外の介入があると、
治療の評価が難しくなります。
ですから、補完代替医療が介入するタイミングは
とてもデリケートで重要なのです。
そして、基本的に医師や獣医師は、
個々の補完代替医療について教育を受けていないので、
患者から補完代替医療の相談があっても
適切に指導することができません。
以上のことから、西洋医学の医師や獣医師は
補完代替医療を敬遠または否定しがちです。
④ 反対に、一般的に補完代替医療の従事者は
西洋医学を否定しがちです。
補完代替医療の中には、西洋医学を否定することによって
自らの療法の有用性を唱える団体があります。
よくあるのが、「抗がん剤」や「ステロイド剤」を
頭から否定する向きがあります。
最近はより巧妙になって、薬剤耐性菌の問題から
抗生剤の使用を良く思わなかったり、
副作用の面からワクチン接種を否定したりします。
(もちろん、無目的な抗生剤の使用や
その選択は慎重であるべきですし、
不必要で頻回なワクチン接種は
絶対に避けるべきです。)
⑤ 適切な受診先が分からないという問題もあります。
実際に、例えば
整体と鍼灸、あんま、カイロプラクティック、接骨院、整形外科の
区別を明確に付けて受診できる人は多くないでしょう。
どこに相談したら良いか分からず、
各種メディアの不正確な情報に頼るしかないのが
現状ではないでしょうか。
先程、動物病院は全科診療が多いと書きましたが、
実はそれぞれの動物病院には得意分野があったりして、
受診してみないと本当のところが分からなかったりします。
⑥ 補完代替医療だけを提供する機関に
最初に受診してしまったがために、
本来ならば西洋医学ですぐに解決していたような疾患が、
軽快することなく長引いたり、命を落とすような
最悪の転機を招く結果となる場合さえあります。
補完代替医療が西洋医学的診療の
受診機会を奪うことは決してあってはなりません。
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