第4の治療法
獣医学領域で古くから言われている
腫瘍の3大療法とは、
「外科療法」「化学療法(抗癌剤)」「放射線療法」です。
腫瘍に対する第4の治療法と
何度ももてはやされている
「免疫療法」の効果は一定ではなく、
十分なエビデンスが得られているとも言えません。
また、使用する機器や薬剤が高価であるなどの理由で
普及には至っていないという側面もあります。
このような現状から、
3大療法以外の治療法を
癌治療の選択肢にあげる動物病院は
決して多くありません
第4の治療法である免疫療法は、
各獣医師の裁量にかかるところが大きいからです。
しかし、3大療法で効果が認められない
腫瘍を患った状態であっても、
それに代わる代替療法で、時に
予後の改善や生存期間の延長に繋がった
と考えられる症例がいるのも事実です
そういった奇跡的な情報を
インターネットなどで得ると、
当然飼い主としては、藁をも掴む思いで
同様な効果を望むのも無理はありません。
「免疫さえ上げれば癌細胞を何とかなるかも」
という期待を込めて、
民間療法を選択することが多いです。
そもそも癌細胞は、
遺伝子変異を起こした細胞です。
ウイルスや感染細胞と同じく、
免疫細胞により認識され排除される可能性があります。
でも、それが
奇跡的な確率でしか可能ではないのでしょうか
その大きな要因は、
症状が確認される頃には
既に癌細胞がその数を余りに増やしている
ことがほとんどだからなのです。
そして、その段階の免疫状態では
もう癌細胞の増殖を抑制できない
状態になっている
と考えられます。
このような免疫状態には、
もちろん個体差があります。
腫瘍は、細胞表面の受容体に働いて
免疫細胞(T細胞)を抑制的にし、結果として
腫瘍に対しての免疫活動を低下させているのです。
ちなみに、この受容体を
人工的に作製した抗体によりブロックして、
T細胞を正常に機能させる機序が解明されています。
このような作用を有する“抗体薬”が、
獣医療でも一般的に用いられる日も遠くない
と言われています
しかし現状では、
臨床獣医師が腫瘍を診断する際、
肉眼もしくは何らかの検査において
認識できる大きさまで増大した腫瘍に対して
免疫療法では効果が認められないことがあります。
言い換えれば、
既に免疫が低下している「担癌患者動物」においては、
免疫療法を行ったとしても
大きな効果は見込めないかもしれません。
現在、注目されている
樹状細胞を用いた細胞療法であっても同様です。
ですので、
腫瘍内にリンパ球浸潤がない場合や、
切除不可能な部位にある腫瘍で大きさが小さいものには、
免疫療法を実施する価値があります。
タイミングや状況を良く考慮した上で、
効果的に使用することは可能であり、
実際に大きな効果を得ています。
それに、免疫療法によっては、
他の抗癌剤や外科手術とも併用が可能です。
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代替療法を施し、何度か
「癌が消えた!」という奇跡的な経験もしています。
それでも、反対に
全く効果が認められないということも
同じように何度もありました。
革新的な治療法が確立されていることが
最も望ましいですが、
未だに治療の施しようがない事も多々あります。
そんな時、それが緩和ケアであっても、
少しでも選択肢が多くあれば
それに越したことはありません。
有効である手段も、そのタイミングが重要です。
では、飼い主はどうすればいいのでしょうか
色々と説明を受け、情報も集めた上で
いざ治療の選択をする際に、
飼い主自身も「責任を負っている」と感じている
と、結果がどうであれ後悔は少ないでしょう。
それがないと、獣医師のせいにしてみたり、
治療法や薬剤などのせいにしてしまいたくなります。
それに、
医療従事者と共にチーム意識が芽生えると、
ドクターショッピング(医療機関を次々と、あるいは同時に受診すること。別名「青い鳥症候群」。)の回避にもなり、
結果としてペット自身にかける負担も少なくなります
(そして、お財布への負担も少なくなりますね)
そのためにも、
主治医との信頼関係の構築が大切です。
但し、
獣医師と飼い主の相性がそもそも合わない、
ということも残念ながらあります。
ある程度の方向性と解決策を
提示しない獣医師は論外ですが、
後は、「信頼し合うという前提」
をお互いにもって、
関係を築いていく機会がある程度必要です。
良い治療法も、良い関係性があってこそ
その効果を享受できます
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