歯石・歯垢除去の闇

最初に、歯科治療について説明します。

歯周病の治療は、本来は「抜歯」ではなく、

保存できる歯を良好な状態に保つことです

ビックリマーク

抜歯が必要なほど進行した重度歯周病ではなく、

その手前段階の歯の保存が可能な

軽度~中程度の歯周病であれば、

治療で抜歯をすることはありません。

(但し、同一個体の口腔内でも

様々なステージの歯周病に罹患している場合はあります。)

歯周炎の進行の最前線は、

歯周溝・歯周ポケット内であり、

この部位の清掃の成否が歯周炎の悪化を左右します。

歯肉縁下領域を清掃することで、歯周組織が回復し、

付着が獲得(アタッチメントゲイン)されることで

抜歯ではない、本来の歯科治療が可能となります

ベル

無麻酔による歯石・歯垢除去では、

見えている歯石(歯肉縁上の歯石)だけを除去することになり、

歯周ポケットがある場合、

歯周病の治療としては何もしていないことに等しい

と言えます。

ここからが本題の一つ目です!

飼育下の犬と猫の約80%以上が歯周病に罹患しています。

動物損害保険会社のデータでは、

犬の手術・入院理由の中で最も多い疾患が歯周病です。

これほど多い疾患にもかかわらず、

歯周病に対して適切な治療、

およびホームデンタルケアが行われていません。

どうしてでしょうか

?

あるあるなケースを考えてみましょう

ウインク

以前からうちの子に、多少の口臭を感じていたけれど、

最近になって悪臭を放つようになった。

動物病院を受診したら、

獣医師から麻酔下における歯科処置を提案されるものの、

「様子を見ましょう」ということになった。

そのうち歯がグラグラと動揺してきたが、

まだペットが食事を摂ることができるため、

「麻酔まではかけなくていいかな」と考えていたところ

無麻酔での歯石・歯垢除去を知り、

トリミングサロンで行ったら、口臭が一時的になくなった。

ところが、更に数カ月経つと、

今度は悪臭のあるヨダレにより

口の周りの毛が汚れ、皮膚炎が起きた。

更には、くしゃみ、膿のような鼻汁の排泄、

眼の下から濃汁の漏出… そして、

長期にわたり炎症を放置した結果、

最終的には口腔内腫瘍が発生

ガーン

いかがでしょう。

口腔内の炎症は、悪臭だけでなく、

神経痛や頭痛にペットは耐え、

そのことにより体力は消耗、免疫力は低下し、

菌血症になり、口腔以外に病巣が波及すると

敗血症となる可能性が高いのです。

上記のケースでは、

飼い主、獣医師、トリマーのすべてに

問題があったことに気が付かれたでしょうか

!?

2019年度の日本小動物歯科研究会のアンケートによる

「どこで無麻酔による歯垢・歯石除去が行われているか」を見ると、

トリミングサロン132件と最も多く、

同様の行為が98件もの動物病院でも行われていました。

以下、ペットショップ77件と続きます。

また、「誰がこの処置を行っているか」という実施者を見ると、

トリマー110件、獣医師86件、動物看護師30件です。

上記のケースにあったような、

トリミングサロンやトリマーによる問題なのではありません。

多くの獣医師も加担しています。

そして、無麻酔での歯石・歯垢除去を行うことは

「いけないことと思う」と回答した獣医師は140件(解答者の83%)、

医療従事者でない人か特定の資格を取得して行っていることについては

「良くないと思う」が153件(解答者の92%)。

実施者の多くが、

「無麻酔での歯石・歯垢除去という行為を、

日常のデンタルケアと捉え、

医療行為ではないと判断した」

と解釈しているのです

びっくり

どうしてこのような事態になっているかというと、

麻酔のリスクについての齟齬です。

歯科疾患の正確な診断に必要なレントゲン撮影も、

治療にも全身麻酔は必須です

!!

(胸部や腹部のレントゲン撮影では、通常全身麻酔は必要ありません。)

例えば、私たちが歯科医院を受診して、

口腔内を見ただけで内服薬を処方されるとか、

歯磨きを指示されて帰ってくることは

まずあり得ないと思います。

そして、多くの口腔内疾患は

薬や注射などの内科治療のみで完治することは

まずありません

ショボーン

動物医療においては、残念ながら

全ての歯の病態を診断するために、治療に際しても、

痛みや恐怖を回避するために麻酔が必要になります。

そして獣医師がその理解を促そうとすればするほど、

飼い主に全身麻酔に対する恐怖感を与えてしまうことがあります

アセアセ

吸入麻酔のリスクと無麻酔によるリスクを考えると、

無麻酔によるリスクの方が圧倒的に大きいでしょう。

無麻酔による歯科処置による大きな弊害は、歯性病巣感染です。

歯周組織で増殖した細菌が、

体循環により全身に回って菌血症を起こします。

その結果、

心内膜炎、腎炎、細菌性肝炎、血栓症などを引き起こすからです。

また、無麻酔ではペットに対して、痛みだけでなく、

精神的にもトラウマを与えてしまう可能性があります。

より良い治療効果を得るためには、

全身麻酔下で歯科処置を行う必要があります。

次に問題の二つ目になります。

デンタルケアを目的に与えたものが

歯の破折を起こすケースが多発しています。

中でもひづめが圧倒的に多いです。

ガーン
ガーン

そして、デンタルガムが原因となることも

ひづめ、アキレス腱、鹿の角などによる

歯の破折事故が非常に多く、

しかも露髄するなど深刻な状況も多発しています。

また、牛の生肉、骨などが冷凍で輸入され、

ペット用に多く販売されています。

これらの製品の中には、

口腔衛生に良いことをほのめかしたものもあり、

注意点については記載されていません

ムカムカ

「噛んだ時に形の変形が起こらないほどの

硬いおやつやガムなどは与えない」

ことです。

破折歯としては奥歯(上顎第4前臼歯)が最も多発し、

続いて犬歯になります。

年齢的には若齢時の発生が多く認められます。

ですから、若い個体に接する飼い主の方、

ペットを飼ったばかりの方に

十分に啓発をすることが重要になります。

最後にまとめると、

歯周病予防で最も大切なことは、

毎日のホームデンタルケアです。

理想的には、歯磨きは「楽しいこと」と

位置付けることです。

また、デンタルケアを目的としたおやつやガムは、

硬すぎないものを選ぶようにしましょう

キラキラ

海外の多くの獣医師団体では、

「動物の歯科疾患の状態を適切に評価

および治療するには、

気管挿管した全身麻酔が必要である」

「無麻酔での動物の歯垢・歯石除去は、

多くの理由により不適切であり、

動物の少しの動きでさえ損傷を与えかねず、

歯肉縁下領域に対するアクセスは

無麻酔下では不可能である」

としています。

飼い主のみならず

多くのペットに携わる人たちが認識し、

解決していきたい問題です。

~毎日を人とペットのWell-beingな生活に~、Wellbe Laboでした❣

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